「溶連菌による喉の痛みを軽んじた結果、10年後、20年後に心臓の手術が必要になるケースが今もなお存在します」と、循環器内科の専門医は警告を発します。今回は、溶連菌後遺症の中でも特に予後が深刻になりやすい心疾患、とりわけリウマチ性心疾患について詳しくお話を伺いました。医師によると、溶連菌感染後に起こるリウマチ熱は、心臓の筋肉(心筋)や、血液の逆流を防ぐ扉である「弁」に炎症を引き起こします。特に僧帽弁や大動脈弁がターゲットになりやすく、炎症が治まった後も弁が硬くなったり変形したりして、正常に閉じなくなる「閉鎖不全」や、開きにくくなる「狭窄」といった状態に陥ります。恐ろしいのは、リウマチ熱の急性期には自覚症状がほとんどなく、微かな動悸や息切れとして現れるだけである点です。そして、そのダメージが数十年という長い時間をかけてじわじわと進行し、50代や60代になった時に突然、重度の心不全として露呈するのです。医師は「現代の日本ではリウマチ熱自体は減少していますが、抗生剤の不適切な使用や、成人の未診断例によって、潜在的なリスクを抱える人が一定数います」と指摘します。大人の後遺症管理において重要なのは、溶連菌感染後に「なんとなく疲れやすい」「階段を上ると息が切れる」「胸に違和感がある」といった微細なサインを見逃さないことです。もし溶連菌を患った後にこれらの自覚症状がある場合は、心電図や心エコー検査を受けるべきです。また、リウマチ性心疾患の既往がある大人が歯科治療や手術を受ける際には、血液中に侵入した細菌が損傷した心臓弁に付着して「感染性心内膜炎」という命に関わる病気を引き起こすリスクが高いため、予防的な抗生剤の服用が不可欠となります。心臓は一度傷つくと、自然に元通りになることはありません。専門医のアドバイスは明確です。大人が溶連菌にかかったら、喉の痛みだけでなく「心臓まで守る」という意識を持つこと。そして、除菌後1ヶ月の時点で、一度は自分の脈拍を確認し、乱れがないかをチェックしてください。過去の感染という小さな火種が、長い年月を経て人生の終盤に大きな炎となって燃え上がらないよう、最新の医学的知見に基づいた慎重なフォローアップが求められています。
専門医に聞く溶連菌が引き起こす心臓弁膜症の長期的な影響