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突然の筋力低下に直面したポリオ経験者の記録
65歳の田中さん(仮名)は、3歳の時にポリオに罹患し、右足に麻痺を残しながらも、長年小学校の教師として教壇に立ち続けてきました。彼の人生は常に「努力で障害を克服する」という強い意志に支えられていました。右足の細さを隠すように仕立ての良いスーツをまとい、多少の足の引きずりはあっても、他の教師と同じように運動会の指導にもあたる。それが彼の自尊心であり、生きる喜びでした。しかし、定年退職を迎えて数年が経ったある朝、田中さんは椅子から立ち上がろうとして、自分の足に力が入らないことに気づきました。右足だけでなく、それまで自分を支え続けてくれた健康な左足までもが、言うことを聞いてくれないのです。病院を回りましたが、レントゲンでは年齢相応の変形と言われるだけで、田中さんの不安は解消されませんでした。最終的に大学病院の神経内科で下された診断は、ポストポリオ症候群でした。医師から「これからは頑張るのをやめて、車椅子を使いましょう」と言われた時、田中さんは自分の人生が否定されたような深い喪失感に陥りました。教師として生徒たちに「努力すれば報われる」と教えてきた自分が、努力ではどうにもならない事態に直面したのです。しかし、リハビリテーションセンターで同じPPSの仲間たちに出会い、彼の心境は少しずつ変化していきました。そこには、車椅子を自在に操りながら、社会活動に励む生き生きとした先輩たちがいました。田中さんは、自分の足を「敵」として戦うのをやめ、今まで60年以上も自分を運んでくれた「愛しい相棒」として労わることに決めました。現在は、外出には電動車椅子を使い、家の中では短い距離を杖で歩くという、活動のハイブリッド化を実践しています。身体の無理を控えることで、以前よりも夜の眠りが深くなり、慢性的な肩こりも和らいだといいます。田中さんの事例は、ポリオ後遺症を持つ人々が直面する精神的な葛藤と、それを乗り越えた先にある新しい価値観の獲得を象徴しています。後遺症は決して人生の敗北ではなく、自分の身体の限界を認め、その中でいかに豊かに生きるかを再定義するチャンスなのかもしれません。