ポリオを経験し、その後数十年にわたり安定した生活を送ってきた人々を襲う新たな医学的課題が、ポストポリオ症候群、通称PPSです。これはポリオ後遺症の延長線上に現れる病態であり、急性期の感染から30年から40年が経過した後に、以前は回復していたはずの筋力が再び低下したり、新たな疲労感や関節の痛みが現れたりする現象を指します。PPSの発症メカニズムは完全には解明されていませんが、最も有力な説は、生き残った神経細胞の過負荷による早すぎる老化です。急性期に多くの運動ニューロンが死滅した際、生き残った神経細胞は死んだ細胞の役割を肩代わりするために、自身の枝を広げて多くの筋肉線維を支配しようとします。この過剰な負担が数十年にわたって蓄積された結果、神経の末端が維持できなくなり、筋肉への信号が途絶えてしまうのです。PPSの症状は非常に緩やかに進行するため、単なる加齢による衰えと見過ごされがちですが、放置すると急速に歩行能力を失う危険があります。診断においては、筋電図検査によって神経の伝達状態を確認することが有効です。PPSに直面した際の管理法で最も重要なのは、これまでのリハビリテーションの概念を180度変えることです。一般的にリハビリといえば「鍛える」ことを想像しますが、PPSの場合は「身体を温存する」ことが最優先事項となります。1日24時間の中で、いかに筋肉を疲れさせないか、エネルギーを節約する生活を送れるかが勝負となります。重い荷物を持つことを避け、移動には車椅子や電動カートを積極的に導入する、あるいは職場の環境をデスクワーク中心に整えるといった工夫が必要です。また、冷えは筋肉の効率を低下させるため、冬場だけでなく夏場のエアコンによる冷えにも細心の注意を払い、常に患部を温かく保つ習慣を身につけなければなりません。PPSはポリオ後遺症を抱える方々にとって第二の試練ですが、適切な医学的管理とライフスタイルの修正によって、その進行を最小限に抑えることは可能です。かつてポリオを乗り越えた強靭な生命力を、今度は「休む勇気」へと転換させることが、長く自立した生活を維持するための最大の知恵となるのです。
数十年後に現れるポリオ後遺症の新たな脅威